第4回 非静力学モデルに関するワークショップ : 講演要旨
気象庁の並列版非静力学数値予報モデル(NHM)で、フラックス形式の移流項に高次の精度の差分式を実装した。差分にはスタガード格子の値を利用する式の利用を試みた。幾つかの実験結果に見られる特徴を紹介する。
気象庁では平成15年度を目途に現行MSMに代わる非静力学メソ数値予報モデル(NHM)の現業運用を計画している。テスト中の移流のスプリットを中心に、HE-VI法を用いて水平分解能10kmのNHMを、時間刻み30-40秒で安定に動作させるための工夫について報告する。
MRI/NPD-NHMの降水予報精度検証を2001年、2002年梅雨期の九州地方、2001年冬季の北陸地方を対象に行った。梅雨期では12UTC初期値でRSMの降水予想が著しく悪く、それを境界値とするNHMも同じ傾向を示した。ただ、早朝の降水についてはかなりの改善が見られた。冬季については、弱雨の精度もRSM程度かそれ以上であった。
気象庁では、非静力学モデルの現業化の準備として、水平解像度10km、予報時間18時間として毎日1度の予報実験を行っている。予報モデルの設定など実験の概要と、降水量予測の検証結果など、静力学モデルと比べたときの特徴を紹介する。
気象庁では平成15年度をめどに現行の静力学モデル(MSM)にかわって水平分解能10km程度のNHMの現業運用を開始する予定である。テスト中のモデルを用いた大雨の事例の実験結果についてMSMと比較して紹介する。
今年4月から非静力学モデル用の変分法データ同化システム(JNoVA : JMA Nonhydorostatic model Variational data Assimilation system)の開発を開始した。高精度な非静力学モデルには専用の高度なデータ同化が不可欠であり、予報精度の向上が期待される。背景誤差共分散の設計や現時点での3次元変分法を含め、JNoVA開発の現状と展望について概説する。
ドップラーレーダの動径風からSDVR等の手法により3次元の風速場を推定することが出来る。これはストームスケールの解析には重要であるが、予報の初期値としては熱力学場が必要になる。ARPSでは、Gal−Chen(1978)やHane(1978)熱力学場の初期化が可能であるが、地形を考慮した場適用性に問題があるため、3次元変分法を用いた手法に基礎的な感度実験を行ったので、その結果を紹介する。
MRI-NHMでは地表面過程を計算するために、陸上ではSommeria(1976)(サブルーチン名:GRDFLH)をもとにしている。そこではMonin-Obukhov(MO)の相似則を用いて高さの無次元量ζに関する普遍関数を導入して繰り返し法で計算している。しかし計算の安定性のためにζの絶対値がある値以内でフラックスを求めている。一般に弱風で強安定あるいは強不安定な場合にζの絶対値は大きくなるが、こうしたレジームではMO相似則は必ずしも成り立たない。むしろ強安定な場合はフラックスを0、また強不安定な場合は自然対流とすべきと考える。ここではRichardson数をパラメ−ターとしたスキームを提案して、GRDFLHの改良を試みたい。
MRI/NPD-NHMを用いた熱雷の予報実験において,日の出後に下層の水蒸気が多い傾向が見られた.NHMはBusinger(1971)に基づいて地表面フラックスを求めているが,安定度を表す無次元高度ζの範囲を制限し,温度に対する粗度長が運動量に対する粗度長に等しい事等を仮定している.これらの条件を用いずにフラックスを求めるスキームを組み込んだ所,水蒸気が多い傾向は小さくなった.不安定成層の場合,粗度長の影響が大きいようである.
地球フロンティアで開発中の非静力学モデルを用いて,乱流モデルに対する依存性を調べた. Deardorff スキームと Mellor-Yamada scheme を用いて, squall line および放射対流平衡実験を行い, パラメタ─スタディを行った.
前報に引き続き、2次元山岳地形モデル上流れのLES解析を行う。本報では標準Smagorinskyモデル、dynamic Smagorinskyモデル、Lagrangian dynamic Smagorisnkyモデル、ハイブリッド型SGSモデル(標準Smagorinskyモデル+dynamic Smagorinskyモデル)の4種類のSGSモデルを用いた解析を行い、風洞実験結果との比較から各SGSモデルの予測精度の検証を行う。
気象研究所台風研究部では、次世代の台風モデルのプロトタイプとして、MRI/NPD-NHMを用いた2way多重移動格子モデルを開発している。今回2way多重移動格子でドライの山岳波の実験を行い、2way化の有効性を示すことができたので報告する。モデル概要、計算手法、今後の開発課題等も説明する予定である。
We intend to develop an atmospheric meso-scale numerical model, which is expected to suitably treat the steep topography and complex objectson the earth’s surface with a finer resolution. In this work, the finite volume method(FVM) in conjunction with the SIMPLER(Semi-Implicit Method forPressure-Linked Equation Revised) algorithms is used for calculations of the unsteady, three-dimensional, compressible Navier-Stokes equations on a staggered grid. Abandoning the customary terrain-following normalization, we choose the Cartesian coordinate in which the height is used as the vertical one. Blocking-off method is introduced to handle all of the steep topography and complex objects above the earth’s sea-mean level. For the spatial and temporal discretizations, higher-order upwind convection scheme is employed, and fully time implicit scheme is utilized. Discussion of the simulation results on flows over cubes, mountain will be presented in the talk.
現在、地球フロンティアでは、正二十面体格子を用いた全球非静力モデルの開発が行われている。このモデルは、質量とエネルギーを保存するスキーム(M. Satoh 2002)を用いている。また、地球シミュレータのような超並列ベクトル型計算機の性能を良く発揮するように設計されている。講演では、モデルの内容(支配方程式、数値計算法)といくつかの計算結果を示すとともに地球シミュレータ上での性能についても触れる。
気象庁では、財団法人地球科学技術推進機構と共同で「人・自然・地球共生プロジェクト」における研究の一つとして、数kmメッシュ雲解像度大気モデルにより、地球温暖化が集中豪雨・雪などに与える影響を調べることとしている。平成15年度の気象庁での現業化に向けて開発を進めている非静力学モデル(NHM)をベースに、地球シミュレータで開発を行う。平成14年8月より地球シミュレータの利用を開始したので、経過を報告する。
数値モデルにおける雲微物理過程の計算には従来、Bulk 法とBin 法の二通りの方法が用いられてきたが、両者の間には Scale Gap が存在するのが現状である。そこで、これら二つを一般化した定式化として、粒径分布関数の基底関数展開に基づく数値解法を提案する。この方法では、基底関数の形状・個数の変更によって問題の自由度を選択でき、モデルにおける雲微物理過程のScalableな扱いが可能となる。
温暖化時の雲・放射過程の応答を調べるため、気象庁非静力学モデルを用いた実験を行った。実験は熱帯海洋上を想定した条件で行った。標準実験はSSTを300Kとしており、温暖化実験ではSSTを302Kとし、CO2の量を2倍にしている。温暖化実験の場合、対流圏全体で温度が高くなり、水蒸気量・雲水量についても多くなる。また、雲頂高度についてもやや上昇している。このような特徴が放射過程を通して温暖化に与える影響をより正確に考慮するため、海洋混合層を用いた実験が必要である。
非線形水平対流の理論的研究(Mori and Niino, 2002)によれば、その時間発展は、拡散、重力流、重力波の3つのレジームの遷移として生じ、各レジームは相似解を持つ。一方、非線形なヒートアイランド循環に関するKimura(1975)の研究によれば、循環の形態にはパラメータに応じて、上昇流が島の中心で強いものと海岸付近で強いものの2つがある。この形態の違いは、重力流レジームが島の中心まで流入できるかどうかで決まり、非線形度を表す唯一つのパラメータで記述できそうであることがわかった。
気象研究所/数値予報課統一非静力学メソモデルを用いて、フロリダ半島(アメリカ)に夏季の日中に発生する対流性の雲(積雲)の再現実験を行っている。この対流性雲が顕著に発生した2001年8月の気象庁全球客観解析に、NHMを多重ネストし、各種パラメータについての感度実験を通して、その発生機構や構造の再現を試みる。特に海陸風循環との関係を、対流性雲の発生位置、日周期、風系などから明らかにする。
TRMM PRの降水プロファイルから潜熱加熱を推定するスペクトル潜熱加熱アルゴリズムを開発した。雲解像モデルを用いて、対流域、浅い層状域、及び融解層を持つ深い層状域(アンビル域)における潜熱加熱プロファイルのLook-upテーブルを作成し、アルゴリズムの検証を行った。対流性加熱の鉛直プロファイルの変化を推定でき、アンビル域については地上降水がなくても加熱プロファイルが推定できる特徴を持っている。
非静力学モデルを用いて、雲システム研究のプラットフォームを構築している。現実的な雲システムを調べるため、客観解析を一番外側の側面境界とし、多重ネストにより様々な解像度を実現する。高解像度モデルでは雲物理・放射・乱流を陽に精度よく表すことを目指す。その結果を利用して低解像度モデルのためのパラメータ化も考える。アイディア先行で実行はこれからであるが、今回はヤマセ雲を例にとり、雲のパラメータ化の問題について考える。